2007年02月12日

「縮小する都市に未来はあるか」

国際シンポジウム 「縮小する都市に未来はあるか」 
"Is there a future beyond shrinking?"
 に参加した。 

「 shrinking cities ×fibercity @ akihabara 」
という縮小する未来都市に関する展覧会、トークイン等の連続イベントの一貫(1/28~2/18)であるこのシンポジウムは、フィリップ・オズワルト氏と大野秀敏氏が基調講演を行い、その後三宅理一、蓑原敬、山形浩生の3氏を交えてパネルディスカッションを行うという形式であった。 

 以前勤めていた事務所で同じプロジェクトチームにいたフィリップと学生時代の師匠による基調講演。そして、ディスカッションにおける他3氏からの批判的なツッコミは、いろんな意味で刺激的であった。 
 昨年の前半'fibercity'プロジェクトに参加したが、プロジェクトを離れてからある程度時間が経過しており、客観的に捉えるにはちょうど良いタイミングかも知れない。
 ちゃんとまとめるには、少し時間がかかりそうなので、以下、気づいた点をいくつかMEMO。 

・ そもそも論ずるほどのテーマなのか?(というクールな視点を持ってみること)
 縮小する都市の未来像について今この瞬間に論ずるというのは、間違いなく重要だと思う。 でも、一歩引いて冷静に考えると、所詮、都市なんて拡大するか縮小するか(あるいはそのままか)の2つ(3つ)しかないんだから、そう取り立てて騒ぐほどのものではないとも言える。 

 産業革命期以降の200年ちょいの間、地球の人口は爆発的に膨張し続け、また都市部への人口集中が多くの国で進行しているため、都市とは基本的に拡大膨張するものであると認識するようになり、社会の仕組みもそれに沿ったものになっているから、修整変更が必要だということであろう。
 たぶん、これくらい肩の力を抜いた方が、より良い分析と立案・提案が出来そうな気がする。

・ 本当に縮小するのか?
 未来のことを議論しているわけだから、100%必ず縮小するかどうかなんて、誰にもわかる訳がない。あくまでも「縮小するに違いない」という(かなり可能性の高い)仮説を立てた上での1ケーススタディである。 
 シンポジウムの議論では、この点があまり明確でなかったような気がする。移民がたくさん来るかもしれませんよ、出生率が劇的に上がるかも知れませんよ、等のツッコミは、最初に仮説だと宣言して封じ込んだ方が良かったのではなかろうか。
 "fibercity / Tokyo 2050"は、「縮小する都市・東京」の未来像を提示しているわけだが、日本国の人口が今後40~50年の間、9000万人未満へと着実に減少していくとしても、おそらく東京は日本で一番最後に縮小する都市であろう、という話があった。たぶん正しいと思う。 
 東京に関わる多くの人々にとって、他の地方都市ならいざ知らず、東京が縮小するというのは、想像しづらいことだろうし、現に、JA63,p15に記されている図「都道府県別人口(2030)」を見ると、2030年の東京は残念ながらまだ縮小していない。 

 「縮小する都市」の未来像を描いてみることが主目的であるならば、東京を対象都市として選ぶのは果たして適切かという話になるが、ここではあくまでも「大都市・東京」の未来像を描いてみることが主目的なのだと思う。 

・ 建築家による都市像の提起について。
 1960年代、建築家は都市に対する様々な提案を行っていた。なぜだか知らないが、それ以降あまり活発に提案を行わなくなった。これは日本に限らず世界的にそういう状況にあったと思う。蓑原氏によると、都市工学・社会工学の専門家達が強くなり、建築家は都市に対して発言することに臆病になった、という話なのだが、もう少し複雑ないくつかの理由があるか、あるいは、もっと単純に単なる流行だったかのどちらかではないだろうか。
 空間のプロフェッショナルによる未来都市像の提示を行ってみせようというのが、fibercity プロジェクトの根本的な野心であり、その部分についてはかなり成功していると思う。

・ その他気になったポイント
<空間のプロフェッショナルがもつべき不動産屋的センス>
<空地、空家、空室、緑の質>
<マスタープラン、ミニプラン、対処療法、そのまんま>

<Hiroo Yamagata> 山形浩生氏はやはりすごかった。パネルディスカッションでは、同時通訳をしながら、同時に評論家としてコメントも行うという離れ業を軽々とやってのけていた。後で、直接聞いてみたが、3,4人の話を同時に聞いても大体理解できるらしい。「だって、大体わかるじゃん、何を言いたそうなのかなんて。」だってさ。

投稿者: Kohei_Kashimoto 2007/02/12 Mon 17:09 | コメント (0) | トラックバック (0)