2007年07月10日

関大 建築設計製図D 「地区再生」 第13回(最終回) 2007/07/10 tue

関西大学 工学部 建築学科 3年生 建築設計製図D 
火曜日 3・4・5限 (13:00-14:30, 14:40-16:10, 16:20-17:50)


11:30-13:00 図面、模型、PPTデータの提出 (締切厳守13時)
13:00-13:50 発表会準備
13:50-19:30 発表会@凛風館1階
下記のスタジオ順に発表。()内はチーム数。 
樫本(4)、ムーサス(4)、藤田(2)、丸茂(5)、西澤(2)、宮崎
(4)、馬場(2)、岡(4)
19:30-21:30 採点会議@研究棟6階建築学科会議室
21:30-23:30 打上げ!@駅前の居酒屋


■ <TeamD; SUKUTTA >
完成度はまだまだ。時間不足の感は否めない。でも少しづつ良い方向に向かっていったと思う。 
課題:「地区の問題を発見・分析し、その再生計画を具体的に提案せよ」に対して、地区の「悪いところ」を探してその解決方法を考えるのではなく、地区の「良いところ」を探してそれを更に良くする方法を考えました、と発表した方が共感を得られたのではないだろうか。 
もちろんレトリックの問題であって、「良いところ」がうまく生かされていないということが「悪いところ」であると言えば元も子もないのだが、自分達がどのように対象地区を把握したかということを明確に宣言することは非常に重要である。 

歴史的文化遺産というとすぐに神社や寺となりがちであるが、都市とは、古いものも新しいものもひっくるめて、「過去」に生産・建設されたもの達の集合体である。 
その中の何を良いものと捉え、何を悪いものと捉えるのか。その理由は何なのか。 そして、それらをどのように再構成すると、この地区はより「良く」なるのか。 
これらを突き詰めて考えることこそが、地区再生計画のアプローチで最も重要なことだろう。

■ <TeamB: キッズみっつ > 
完成度はスタジオ内では最も高かった。 よく頑張ったと思うと同時に、まだまだ詰めが甘いとも思う。 
「駐車場に車がない時は子供たちの遊び場として利用します。」なんてことをあっけらかぁんと言ってみたり、広大な住宅地開発をほとんど即興的に(バラバラに)デザインしてみたり、突っ込みどころは満載であった。 
割と着実に進んでいたのだが、テーマやアイディアを実体的な建築・都市空間に翻訳する段階で、多少なりとも論理の飛躍があったり、飛躍はなくとも空間としての魅力が十分に伝わってこなかったりした。 

短期・中期・長期の3つの計画案を織り交ぜたところは評価できる。 いや、もう少し正確に言うと、2~3の計画案を織り交ぜようと、こちらが要望したのに対して、明確に反応してくれたチームはここだけだった。 難しい要求だったのかも知れない。 チーム内でテーマをすり合わすだけでもかなり消耗するのに、その上複数案を出せと言われても…、と思うのはわからなくもない。 

一つ言えることは、都市空間とは極めて多様で複雑なものであり、そこに参加する人々も多種多様である。 また、都市とは常に変化し続ける動的な存在であり、ある固定的な状態へと収束し「完成」するものではない。 
そういったものの現状を把握して、より良い将来につながる計画を提案しましょう、という課題に対する答えが唯一無二であるわけがない。 多数の可能性の中から実効性の高そうなものを2~3選ぶというアプローチは自然だと思う。 答えは一つではない。

■ <TeamC: YUTORI > 
じわじわと良くなってきた。 もう後2週間欲しかったかな。 
図面表現の見せ方やまとめ方は、なかなかクリアだし読み取りやすかったと思う。

一般に、近代化に伴っておこる都市部への人口集中は極めて急激であり、その分発生する問題もわかりやすく、かつ、解決方法も明瞭である。 簡単に言うと、建物建てて人が生活するスペースを増やせば良い。 
ところが、いま日本やいくつかの先進諸国の都市で起こっている人口減少による縮小プロセスは、極めて緩やかに起こっているため、大きな問題としては認識されにくく、発生する問題も不分明である。
地方都市に行けばもっと顕著に感じられるだろうが、大阪・吹田あたりだとまだそれほどはっきりとは見えてこない。 でも部分部分をつぶさに観察していくと、空地化・空家化・空室化が静かに進行していることが読み取れる。 そこには、人口減少・少子高齢化の街がすでに存在している。 

地区の計画について思考する上で「このまま放っておいたらどうなるだろうか?」という考え方は極めて重要である。 放っておいても「見えざる手」に導かれてある程度何とかなるところに、わざわざ計画を押し付ける必要はあまりないだろう。 
駅からの距離も遠く、路線価図で確認しても明らかに不動産価値が低く、人口減少・少子高齢化が進行している、という「放っておくとかなりヤバそうな」場所。 そこになんらかのアイディアを投入することで価値転換をはかる。極めて素直なアプローチだと思う。 

■ <TeamA: House Erection >  
発表直後の他の先生方からのコメントは割と好意的であった(と思う)。 
でも他の先生方もその後の会議ではいろいろと気付く。(たぶん発表中から気付いていたとは思うが。) 
図面がない。地図がない。どこでやるんだ、この提案。こういう提案、認めてよいのか。等々。

……。 
しかたない。いっちょ厳しめに書きますか。 

ある意味で表現は成功していたと言える。 少なくとも瞬間的には好意的なコメントを引き出せたわけだ。 得意なスケッチ・パースを全面に押し出し、A1×4枚の提出図面を24枚のパースだけで埋め尽くす。 模型ではうまく表現できなかったためか、一応大きめの模型を作ってはいるが発表内容としてはあまり触れていない。 表現したい部分に集中した要領の良いプレゼンであった。
個人的には、こういう要領の良いプレゼンを、推奨している。 やたらめったら時間とエネルギーを投入している割には、効果が出ていない学生をみると、もっと要領よくずっこくなれよと言いたくなる。 

だから、提出物として、図面がない、地図がない、模型があっさりしている、スケッチパースしかない、なんてことはあまり気にしない。瑣末な問題だ。
このチームにとって本質的な問題は「説明責任の軽視」だと僕は思っている。 

この種の課題で問われるポイントは極めてシンプルである。 
どこで、何を、なぜ、やるのか。 この3つだけ。 提案者はこの3つのポイントを世界中に対してひたすら説明し続けなければならない。 その説明の内容にどれだけ説得力があるか、どれだけ多くの人の共感を得られるか。 結局のところ、提案内容の良し悪しを決めるのはそこしかない。

他の都市でも適用できそうな提案をしたいという意図があったのかも知れない。 だが、それは今回の課題で場所を明示しないことの理由にはならない。 
抽象的な提案は一見きれいにまとまるかもしれないが、はっきり言ってマスターベーションみたいなものだ。 その提案を現実の具体的な場所に投入した時に発生する様々な問題をどう処理するかが問われているのだ。 「どこで」という問いに対して答えることを放棄した時点で、戦線離脱したようなものである。

また、説明責任を果たすためには、自分達の中でいったん組み立てた論理やストーリーを他者の批判にさらし、必要とあればすぐに変更・修正を加えるという柔軟さと知的謙虚さも大切である。 
説明できていない以上は、それまでのストーリーをいったん破壊して組み立て直す。 このごく当たり前のプロセスを地道に繰り返し続けることによってこそ、誰からの批判にも耐えうる強靭なストーリーを組み立てることが可能なのだ。

「説明責任を果たす」とは、知性の問題ではなく、姿勢の問題だと思う。
情報収集・分析から得られた客観的な事実や仮説、数多くの他者からの批判や意見を前に、真摯にかつ柔軟に取り組む姿勢こそが、より良い提案につながるのではないだろうか。 


■ 総括。
この課題は難しい。 ただでさえ難しい上に、当スタジオでは場所も限定しなければ、デザイン対象も限定しない、という完全お任せ課題にした。 
自分自身の頭で「この地区の問題は何なのか」と考え、チームのメンバーと議論を重ねながら、問題を定義する力を養う。 これこそがこの課題の醍醐味だと僕は思う。 少々こぎれいな街並みをデザインすることよりも、「問題を定義する」力を身につける方が重要なのは明らかだ。 実質13週間の課題の中でどの程度身につけられたかはわからないけど、自分なりの問題意識を持つきっかけになればと思います。
しかし、どのチームもみんな期待以上に一所懸命取り組んでくれました。 少し厳しいことも書いたけど、次のステップへの糧にしてもらえたらと思っています。 とにかく最後までテンション高く取り組んでもらえたのは、講師としては至上の喜び。 
3ヶ月間、ありがとう。


■CF. 打上げにて。
えっ!!! 君らレム・コールハース知らんの? 
絶句。。。 横にいたジェフリーもびっくり。 
Fumihiko Makiはほぼ全員知っていたんだが。
唖然。騒然。愕然。。。

投稿者: Kohei_Kashimoto 2007/07/10 Tue 23:04 | コメント (0) | トラックバック (0)


2007年07月03日

関大 建築設計製図D 「地区再生」 第12回 2007/07/03 tue

関西大学 工学部 建築学科 3年生 建築設計製図D 
 火曜日 3・4・5限 (13:00-14:30, 14:40-16:10, 16:20-17:50)

13:00-18:00 スタジオ内にて最終講評会のリハーサル、続いてエスキース。 

 あと一週間!

■ <TeamA: House Erection >
固い。どうにもこうにも固い。とんでもなく頭が固い。と感じる。 
ま、こっちの言うことをそのまま素直に受け入れるよりは、骨があって良い。とも言える。 
良い意味でも悪い意味でも頑固。  チームの雰囲気は良いし、手も動いている。
先週は全員お腹を壊して少し止まっていたけど、基本的にはかなり頑張っている。 
にもかかわらず、この4~5週間はほとんど同じところをくるくる回っているように見える。 
実際のところ、こっちが何を言おうと自分達の案に自信があれば、ガンガン進めていくだろうから、どこかにモヤモヤ感があるんだろうな。
再度、『頭にガツンと一撃』をくらわして、2つめの答えを見つけるようにと促したが、はね返されてしまった。 相当に固いぞ!

■ <TeamB: キッズみっつ >
今のところ最も進んでいるチーム。 パワーポイントのスライドも結構しっかり出来上がっていた。 
おかげで、かなり細かいところまでディスカッションすることが出来た。 ダイアグラムの色の使い方、文字の大きさや形のメリハリについて、など。 ほとんどお姑さんか?と思われるくらいの勢いで、WHY?、WHY?、WHY?、なんでその文字赤色なん?なんでその楕円形とこっちの楕円形が同じくらいの大きさなの?と突っ込みを入れる。 表現上の些細な部分を突付いて楽しんでいるのではなく、表現しようとしているものの意味を徹底的に考える癖をつけてもらおうというのが狙い。 特に、ダイアグラム化・図式化のプロセスでは、常に意味を考えてヒエラルキーを明確にし、整理整頓して伝えようとすることで、かなり良い思考の訓練になると思う。 

■ <TeamC: YUTORI >
急げ! そんな悠長なチーム名をつけてる場合か? 
まだそこにはバラバラな案が4つ横たわっているだけじゃないか。 インテグレートしようぜ。
TeamAとは正反対で、僕の言うことを素直に聞きすぎているんじゃないか? 自分達で考えろ!

■ <TeamD; SUKUTTA >
こちらも急げ! なんとかしてまとめあげよう! 
もっと柔軟にアイディアを出して、歴史的文化遺産ネットワークを豊かにしよう。

■感想 
大丈夫か?! 

投稿者: Kohei_Kashimoto 2007/07/03 Tue 20:39 | コメント (0) | トラックバック (0)