2009年07月22日

再考・国立西洋美術館

2009/7/10 fri
久しぶりに国立西洋美術館を訪れる。
(参考:『世界遺産 国立西洋美術館の登録見送り 2009.6.27』  「世界遺産」 UESCO

巨匠コルビジェ様の作品が上野にあるぞ!ということで、お寺や神社をお参りするような心境で学生時代から何度となく通っているのだが、今回、ふとした拍子に、あれ?果たしてどうなんだろう?という気分になった。 もちろん質の高い建築作品であるのは確かだし、巨匠にケチをつける気はさらさらないのだが、冷静になると不思議なところがたくさんでてきた。 以下、メモ。

・ファサードの構成は文句なく美しい。 中心よりやや右にずらして設置された、二階の開口部とテラス、そして前庭とそのテラスを結ぶ魅力的な階段……。 あれ?この階段上ったことあったっけ? いつ行っても鎖で閉鎖されていたような気がする。 このテラスは2階の展示室と直接つながっているのだが、開口部にはミラーシートが貼り付けられていて、内部からはその存在がわかりにくい。 

・美術館中心部の2層吹き抜けの展示室。巨大な四角錐のトップライトとその下を横断する梁。内部空間で最も魅力的な場所だと思う。ただ、トップライトを見上げようとすると、梁下に据えつけられたダクトレールとスポットライトが、嫌でもまぶたに焼き付いてしまう。ちょっとZN(残念)。後から取り付けられたのだろうけど、まぶしいって。

・その吹き抜け展示室をぐるりと取り囲む2F展示室。ここの見所はなんといってもトップライト。今回の展覧会でも、コルビジェによるスケッチや断面図が繰り返し展示されていて、彼が最も力を注いだところとの説明もあった。なのに、なんと……。 今回一番驚いたことかも知れないが、展示室中央にあるそのトップライトは、間接照明でライトアップされていた。 考えてみたら凄いことだぞ、ライトアップされている照明装置って。

・そして、増築。この50年間に坂倉順三や前川國男の設計で何度か増築されているようだ。今回の展覧会ではその経緯が模型で展示されていたが、その経緯は若干複雑そうな印象。現在の新館は前川の設計による。 さて、問題はここからなのだが、この美術館、ル・コルビュジエの大発明、「無限成長美術館」のコンセプトでデザインされた、世界に3つしかない美術館の一つと言われている。(あとの二つは、インド・アーメダバードのサンスカル・ケンドラ美術館(1957年竣工)とチャンディガールの美術ギャラリー(1968年竣工)。) そして、前川も坂倉もコルビュジェの直弟子。普通なら、師匠の「無限成長美術館」のアイディアを実行に移すまたとないチャンス、と捉えると思うんだが、全くの別物が本館に付け加えられている。 確かに、敷地の制約もあるし、そう簡単には出来なかったのだろうけど、せめて外装仕上げは本館と近いものにしても良かったのでは、と思ってしまう。

魅惑と謎に包まれたこの国立西洋美術館。
開館50周年記念事業「ル・コルビュジェと国立西洋美術館」は8/30まで。

投稿者 Kohei_Kashimoto : 2009/07/22 Wed 02:38

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