2006年11月07日

京都女子大 空間デザイン実習Ⅲ 「保育所」 第8回

京都女子大学 家政学部 生活造形学科 2年生 空間デザイン実習Ⅲ
 火曜日 4・5限 (14:45-16:15, 16:30-18:00) 

■ 講評会。 

 前半 (14:45-17:00) 各スタジオ毎に講評会。
 後半 (17:00-18:30) 各スタジオから選出された約3案×3、トータル約10案を全体で講評会。 

・ アンケート用紙(A4・1枚)の配布。
  授業の感想、良かったところ悪かったところ、授業に対する希望、その他を記入して授業の終わりに提出してもらう。 
・ 投票用紙の配布。
  大判ポストイット(7.5cm×7.5cm)を各自3枚ずつ配布する。全員のプレゼンテーションが一通り終わった後、それぞれ自分以外の作品で気に入った作品、良いと思う作品を3つ選んで、その作品の上にポストイットを貼り付けて投票する。 ポストイットには、1.良いとおもうところ、2.こうすればもっと良くなると思うポイントについて、コメントを書き込む。 (ということをしたかったが、時間切れでコメントの書き込みまでは出来なかった。)
・ 講評会開始。 一人2分発表、学生によるコメント30秒、樫本コメント30秒。
  発表者数は23名だったので、ひとり3分程度で大丈夫だろうと思っていたが、結果的には大幅に超過してしまった。 他のスタジオの皆様すみませんでした。 
・ 投票、そして全体講評会での発表者3名の選抜。 
  学生による得票数が最も多かった人は無条件で選ばれる。 残り2名については、樫本が「特徴的である」「他のスタジオの人にも紹介したい」と思う作品を2つ選ぶ。 

■ 「評価」について。 
いつも思うことだが、「評価」というのはものすごく奥が深い。 
私の基本的な評価基準については、コチラを。
学生同士による評価(投票)を行うのは、学生自身が評価作業に参加することで得るものは非常に大きいと思うからだ。 また投票結果を見ることで、僕自身の評価基準の再チェックにもなれば、学生達がどういう思考をしているのかを考察することもできる。
今回に関して言うと、学生が評価される基準は、1.学生同士によるもの、2.全体での講評会発表者に選ばれるかどうか、3.いわゆる成績表につく成績、と3つ用意されている。 (2と3は、どちらも先生サイドによる評価だが、2には他のスタジオの人に紹介したい作品かどうかという基準が入ってくるため、3とは微妙に異なる。) 
難しいところではあるが、性質の異なる評価基準を複数用意してあげるのは、悪くはないと思う。
実際、先生には選ばれなかったけど、クラスメイトには選ばれたぞというのは、自信につながると思うし、先生側には説明責任が課せられるため、緊張感が生れる。

■ 表情のパターン
全体で7週間という比較的長期間の課題を通して、学生の表情を見ているといくつかのパターンが感じられる。
1.序盤戦頑張っていたが、途中からうまく出来なかったり楽しくなくなってきたりして、最初明るい表情だったのが徐々に暗めになってくるパターン。 
2.反対に、途中まではあまりまとまらず、楽しくなさそうな表情だったのが、終盤戦で一気にまとまってきて、最後は楽しくてしかたがないといった感じの表情になるパターン。
3.コンスタントに頑張っていて、自分でも結構面白いことをしているとは思うんだけど、プロセスがしんど過ぎて、もう勘弁して下さい、という表情になるパターン。 
いわゆる「成功体験」とは2番目のことなのだろう。 課題を通してそういう経験を得ることは、とても素晴らしいと思う。 でも、1と3の経験も必要不可欠。基本的には、成功失敗両者含めて楽しむぞというスタンスで取り組みましょう。 

以下、学生投票の得票数順にMEMO。
(有効投票数は23×3=69票)

01. Od 得票数13票。 お見事!ぶっちぎりの第1位。 全体講評会にて発表!
「デン」というテーマ設定、平面計画の巧みさ、最後の1週間で出てきた立面の表情、模型上でのテクスチャ表現、安定感のある図面表現、など、2年生なのになんでこんなに巧いんだ?と聞きたくなる程。 まぁ、誉めてばかりでは面白くないので、更なる発展のために小言をいくつか。 やはり立体で考える癖をつけてもらいたい。設計の方法にかっちりとした手順などはなく、それぞれが好むスタイルで設計を進めれば良いと思うけど、平面図を決めて、断面図・立面図へと移り、最後に模型を作るというやり方だけでは、どうしても立体幾何学的に不整合が発生しやすい。全体のヴォリュームのバランスと、コンセプトとの整合性などを詰めていくには、立体で思考するのは必要不可欠な作業だと思う。
02. Or 得票数10票。 どうどうの第2位! 
最後の追い上げ頑張ったね。楽しんで作ってたのが印象的です。平屋建て、ゆったりとした大きなスロープで屋上庭園へ上るという構成。お母さんの意見による「語らい広場」。「Large Playground」というタイトルも分かりやすくて良かった。もっと作りこめば、もっと楽しくなると思います。 
03.Oik 得票数7票。同点3位。 
「お花がさいた」平面も図面の飾りもお花が咲いていて楽しげでした。
04.Sm 得票数7票。同点3位。 
「ぐるぐる保育園」。パステルで着彩したドローイングと、模型の実物樹木が印象的。
05.Id 得票数5票。同点5位。
「まなびや」。非常に良かったと思います。全体講評会での発表者選抜ランキングは次点でした。惜しい!もう一人選んで良いのなら選びたかった。 裏山と建物屋上がスムーズにつながるという構成。円形のサンクンガーデン。家具の提案。全体と部分のバランスもよく、模型表現、模型写真も良かった。本人もなかなか面白い子でした。
06.Ks 得票数5票。同点5位。
「つみきの舎」。頑張ってきれいな図面を仕上げました。 でも正直言うとちょっと困るんだな。設計内容に関する話し合いをあんまりしないうちにデザインを固めちゃって、絵の描き方の話ばっかりしてたような印象があります。 基本的には、どこにエネルギーを投入するべきかって話で、先生間でも意見が分かれるかも知れないけど、「空間デザイン」の「実習」をしてもらいたいんだな。みっちりと。
07.Ikg 得票数5票。同点5位。全体講評会にて発表!
短大からの参加で、最後2回エスキースしただけだったけど、ぐにゃぐにゃ床の上で子供が楽しく遊んでいる様子が感じられます。もう一頑張りして、しっかりとした建築に持っていけてたら、もっと良かった。 プレゼンテーションも個性的で、建築雑誌などを読んでよく勉強してるのがうかがえる。 だが、しかし!読み過ぎは禁物だよ。自分の頭で考えられなくなる危険性があるから。 
08.Iu 得票数4票。第8位。
「Concourse」最後、良く頑張りました。 本人自身が自分のデザインを楽しみ始めたような雰囲気が出てきたのが、とても良かった。
09.On 得票数3票。同点9位。
「視育」。タイトルは若干こわいが、見る見られる関係を生み出そうという最初のテーマを、上手に美しい形態にまとめあげました。
10.Kd 得票数3票。同点9位。
「Kids in wonderland」。アリスの国を作り上げた。なかなか楽しそう。子供にも喜ばれると思う。もっとカラフルな仕上げになるのかと思ったら、白黒ドローイングがかなりシュール。本人はそこを狙ったと言っているが…。
11.Sj 得票数3票。同点9位。
先週の流血事件にもめげず、よく提出できました。立派立派。 不思議な遊具を部屋のパーティションにする案もなかなか。
12.Oi 得票数2票。第12位。全体講評会にて発表!
「おかしな保育園」 えっ?2票? ちょっと驚いた。僕の評価基準では、トップクラスに位置してるんだが。 こういうところが学生による相互評価を行うことの醍醐味かも知れない。 難しい平面構成と格闘したところや、1/100模型でスタディし続けた部分、ドローイングも味のあるタッチで仕上げている。ショートケーキ・イチゴちゃんのコンセプト(というよりも形態のモチーフだが。)も、自分の頭で考えて、あらゆる部分に徹底させている。 よく頑張りました。 頑張りすぎたのか、最後の方、少しつらそうにしてたのが、ちょっと残念。 もっと図太く楽しもう!
13.In 得票数1票。同点13位。
前半戦エスキースをすごく頑張ってたのが印象的。 デザインをもうひと工夫出来れば良かったんだけど。 手は動くから、いろいろ勉強して知識を増やすともっと楽しめると思います。
14.Ogt 得票数1票。同点13位。
この1票も少し不思議。設計はうまいよ。も少しメリハリが出てくるとかなり良かったと思います。
以下、得票数0票の方々が9名。 
難しいことにトライして破綻しちゃった人もいれば、単純にサボってただけの人もいたかと思います。 同じ0票でも当然点数の良い人もいれば、悪い人もいます。 
やっぱりある程度は頑張らないと良いものにはならないし、本人も楽しくないと思います。 要するに、「楽して楽しくはならない!」ということでしょうか。いやはや。我ながら名言。 
頑張ったけど破綻した人は、絶対にへこまないように。 頑張ったけどうまく行かないというのは、成長過程で必要不可欠な経験だと考えます。 今回その経験が出来てラッキー!という気持ちで、図太く楽しく生きましょう。

投稿者 Kohei_Kashimoto : 2006/11/07 Tue 23:54

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