2007年05月29日

関大 建築設計製図D 「地区再生」 第8回 2007/05/29 tue

関西大学 工学部 建築学科 3年生 建築設計製図D 
 火曜日 3・4・5限 (13:00-14:30, 14:40-16:10, 16:20-17:50)

13:00-15:40 <各チーム、発表する。>  
15:50-16:50 <Kevin Lynchのイメージマップを作成してみる。>
17:10-17:50 <最終提案内容について、各チームで話し合う。>


■ <各チーム、発表する。>  

 1.対象地区のマッピング作業を継続して行い、発見したことを発表する。
 2.対象地区の良いところは何か、悪いところは何か、についてチーム内で話し合い、地区再生計画を策定する上での、問題設定・課題設定を行い、発表する。

ということをやりましょう、と先週の授業の終わりに伝えたつもりだったんだけど、
各チームそれぞれ微妙にクリエイティブな解釈をしてくれていたようです。 

・TEAM_A
情報収集のみに集中。 課題設定は行っていなかった。
が、情報収集に関しては、期待以上の成果を出していたと思う。
internetでの情報収集、大学の図書館・吹田市中央図書館・市役所での文献調査、現地でのヒアリングなど、工夫して調べた形跡あり。 対象区域の内側だけでなく、少し外側についても調べることで、4~5年後に完成予定の新駅(JR城東貨物線を活用して整備される大阪外環状線の新駅)や、そこにいたる都市計画道路についての言及は良かった。
ただし、行政サイドの考え方に捉われすぎるのは危険。 あくまでも自分達が理想とする都市像・対象地区の将来像を描き、そこにいたる方法をデザインするのが主旨である。 既存の都市計画図をあまり見つめ過ぎないように。 


・TEAM_B
こちらの意図を比較的にちゃんと理解してくれたチーム。 
マッピングによる地区分析では、手元にある明治20年、昭和31年、平成15年の地図(1/10,000)から、建物、線路、学校、川・池、などの要素を抽出し、その変化を調べる。 
また、Y君は人口構造などを地図上に反映させるため、web上で<GIS>のサイトを活用していた。
手を動かして地図をトレースすることで、対象地区の実体としての特徴を把握することと、地理情報システムを活用することで、実体としては見えづらいがその地区の持つ隠れた重要な情報を抽出することが、大切である。 

課題設定・問題設定について、このチームはまず「GOAL」の設定を行っていた。 
安全性、自然、遊び場、内部交通、衣食住、など、一般論としての都市・街の「あるべき姿」の特徴をいくつかまず設定し、その中で対象地区が既に獲得している特徴を消去し、残ったものが解決されるべき課題だ、という論法であった。 
ある意味で非常に面白いアプローチだとは思ったが、果たして都市の理想像とはある定まった「GOAL」へと向かっていくものなのだろうかという疑問がある。 都市は建築のようにスタティックな形式として捉えるよりは、常に変化の過程にあるダイナミックなものとして捉える方が自然ではないだろうか。 対象地区を客観・主観おりまぜて把握し、そこで見出された個性を伸ばしていくというアプローチも検討すべきだろう。 


・TEAM_C
マッピング作業を通して発見したことを、建築、土木、空地・緑地、その他、という枠組みで整理し、そこで見出された「開かれていない公共施設」「駐車場の利用法」「小さな公園・空地の利用法」を解決しようという内容で、具体的には吹田街道沿いに何かするということであった。 
他のチームにも言えることだが、この対象地区に固有の何かを見出し、それに対して何らかのアクションをとる、という方向性を検討してもらいたい。 
対象地区の把握という作業を通して発見したことが、まだまだ一般的なもののように感じる。 


・TEAM_D
やっちゃったー、というのが第一印象であった。 
今回、樫本スタジオ内ルールとして、対象地区内のどこで何を提案しても構わない、全て各チームの判断に任せる(もちろんいちゃもんはつけるが。)、ただし2~3の複数の手法を織り交ぜて欲しい、と伝えている。 
意図としては、都市というものは、巨大で複雑だけど多様な価値観に対しては非常に寛容なものなので、再生計画提案の答えが一つしかないというのは、そもそも不自然なのではないか?という考え方が根底にある。 また、計画手法にも、少数の関係者だけで短期間に一気に行えるものと、ゆっくり時間をかけて行うべきこと、など様々なパターンが考えられるので、それらを取り混ぜることでより強力な提案ができるだろうとも考える。 
吹田駅周辺計画、工場付近の再生、高圧線下緑地の再生、住宅街の一角を再生、という4つの場所を選んだ上での提案は、一つ一つは悪くない。結構面白そうなのもある。 だが、それら相互の関連性は希薄であり、理由付けも弱かった。 僕達が良くないと思った場所6ヶ所のうちの4つを選びましたでは、対象地区全体に対するビジョンが感じられない。 一つ一つは悪くないのでもうひと踏ん張り。


<読み取る力> 手を動かして地図をトレースし、白黒で2値化することによって、漠然と地図を眺めていた時には見えていなかったなんらかの特徴を発見することが、この作業の目的である。 地区内の建物分布の歴史的変遷から何が発見できるのか。 描いた地図を別の地図と重ねるとどんなことがわかるのか。 常に目的を意識して、何かを発見しようと心掛けていないと、単なる塗絵大会になってしまう。 もちろん、この「何かを発見する」という力は、そう簡単に身に付くものではなく、
意識して繰り返し練習するしか方法はない。 残りの授業時間で出来るだけ一緒に考えるよう努めたい。

<国語力> 発表を聞いていると、その日本語ちょっとおかしくない?と感じることが非常に多い。意識してちゃんとしたわかりやすい表現を心掛ける以外に道はなさそうなのだが、少し考えたのは、建築設計と都市デザインの課題の違いという論点である。 
建築設計の場合、もちろん言語による表現も重要なのだが、形良ければ全て良しという部分もある。 逆に、大した形を作り出していないのに御託を並べているインテリ学生には、ガタガタ言わんと早よ作れ、と指導することが多い。 
ところが、都市デザインの課題の場合、どこで、何を、なぜ、行うのか、という5W1Hがしっかりした発表をしてもらわないと、いったい何やりたいんだかさっぱりわからない。 昨年は、1チーム、最後の追い込みの段階で毎日のように発表用原稿を添削したが、絵や模型はすごく頑張っているのに、国語力がネックとなってうまくいかないのは、非常にもったいない。 

投稿者 Kohei_Kashimoto : 2007/05/29 Tue 19:35

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