2008年10月11日

帰ってきたあいつ。

CIMG7212.JPG

 昨日、こいつが帰ってきた。
 契約解除に伴って、借主:函館市場(サンマルクHD)から、貸主の不動産運用会社に返還されたわけだが、具体的には、「保証金・建設協力金の預り証」が借主から貸主へ、「建物明け渡し・解約証明書」が貸主から借主へ、「鍵」(各種いろいろ約20コ程)が借主から貸主へ、「鍵引き渡し書」が貸主から借主へ、返還・交付されるという形をとった。 
 閉店が最終的に決まった後、資産区分の再確認と原状回復工事の内容を決定し、9/15の閉店以降は、内部の片付け・看板の撤去・原状回復工事、10/2に復旧工事検査・修正箇所の確認、そして昨日最終的に戻ってきたことになる。

CIMG6807.JPG (現状回復工事中の風景)

 今年の3月末にサンマルクHD常務から突然「やめます」と切り出されたのだが、その時はさすがにびっくりした。建物竣工・店舗オープンから、たったの4年。 えらいあっさりしてるなぁ。いやひょっとすると、賃料交渉に向けてのブラフか?など様々な考えが駆け巡ったのだが、話を聞いているとどうもそんなチャチなやり取りではない。オープン以来の月次損益計算書の生データを提示され、経年変化の説明を受ける。先方の意思は明確だった。 ことが「交渉」ではなく、やめるという「意志伝達」である以上、こちらもそれ以上四の五の言っても始まらない。 ただ、なぜ閉店になるのか、なぜ利益が上がらなくなったのか、その原因は何なのか、それは解決可能だったのか、といったことを否が応でも考えてしまう。 以下、関係各位との会話からのメモ。

「競合店」 
 近くに競合店 http://www.foodsnet.co.jp/chojiro/index.html が出来たから、というシンプルな理由が挙がっていた。 確かに、高級回転寿司市場も飽和状態だろうから、近くにライバル店が出現すれば売上は落ちるだろう。即断・即決・即実行、即参入&即撤退、は一つのセオリーになっているから、ダメとなればさっさとさようならということになる。 
 でも、どうなのだろう。なんだかんだで初期投資は億単位になっているのだから、近所に競合店ができたくらいでいちいち閉店していたら、一投資案件として見ると成り立たないんじゃないだろうか? 競合店出現リスクなんてほぼ100%なんだから、業態転換などの策を予め用意していても良いようにも思う。チェーンストアは標準化のシステムなのだから、そのシステムの中に組み込めればと思う。 もちろん、言うは易し、ってことなのだろうが。

「直営店とフランチャイズ店」
 これも一つの論点であった。土地建物所有者からすると契約段階ではフランチャイズ店よりも直営店の方が好ましく見える。契約相手としての信用度が全然違うからだ。だが、ナショナルチェーンの場合、本部が各店舗をどこまで管理し叱咤激励できるかという問題が発生する。ともすると、限られたエリア内で数店舗を運営しているフランチャイジーの方が、細かいところまで目が届くというわけだ。直営店スタッフのマインドがサラリーマン化してくると、自営業マインドのフランチャイズ店とは本気度が異なってくる、という趣旨の説明を受けた。 http://frn.jfa-fc.or.jp/ 

「効率主義」
 生ものを扱っている以上、売れ残ったら廃棄処分する。 もちろん廃棄処分はもったいないし、明らかに無駄なコストだ。 だから、POSシステム等を使って、何が売れているのかを分析する。 売れていない商品が明らかになる。 その売れない商品をメニューから外す。 ロスは減るから、コストダウンにはつながる。 しかしながら、同時に、品数が減ってメニューに魅力がなくなってくる。 

「コスト削減 vs. 売上アップ」
 これも永遠のテーマなのだろうが、売上-支出=利益>0 の式を成立させようとする時、多くの場合は、支出を減らそうという方向に動いてしまうのかも知れない。 確かに、支出を減らすことは自分だけで出来るが、売上を増やすことは相手さんあっての話なので、簡単には達成できない。 前述のように廃棄ロスを減らすために商品数を減らす。人件費を削減するため、人数を減らして、その分一人一人が頑張る。でも売上が増えるわけではない。 他人事のように書いているが、経営者である以上、日々直面する課題だ。


 その他、「チェーンストアとアーバニズム」、「標準化 vs. 個店化」、「スクラップアンドビルド―なぜ4年で解体されうるのか―」など、ここ数年僕自身が抱いているテーマと関連する様々な論点が出てきたが、今回はこのあたりにして、また改めることにする。
 オープンからは4年半しか経過していないが、オープン準備には1年以上もかかっている。 事業者と土地建物所有者間での定期借家権契約の締結、そして、双方協議しながらの建築計画の策定、実施設計、工事区分に従っての新築工事発注、工事監理。 また、近隣や行政、国道事務所、クレーマーとの話し合いなど、建物の竣工、店舗のオープンに至るプロセスは決して簡単なものではなかったと思う。
 サンマルクHDならびにその他数多くの関係者の皆様、長い間ありがとうございました。 

投稿者 Kohei_Kashimoto : 2008/10/11 Sat 10:12

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コメント

ご無沙汰です。
魚食べてますか?この前の天神さんは、魚はおいしかったけど、肉のほうは食べれませんでした。(意味深)

函市残念ですね。回転前に店を見せてもらったのを覚えています。

後から来たもんの方が絶対有利ですもんね。後出しじゃんけんで負ける奴なんてそういないもん。(たまにおるけどね)

チェーン店て商品や値段や店舗そのものでそんなに差別化できないと思うんです。前提として模倣が簡単なシステムであることが求められる以上、資本さえあればだれでも真似ができることですもんね。

結局、人しかないんだと思うんです。だけど現状は人が最大の経費で徹底的に切り下げてる現状では差別化にならないでしょうね。ほんとは投資なのに。

僕も広告費は経費でなく投資ですっていうけど、理想論言うなで一蹴ですわ。

ワタミのおっさんが教育に手を出したのは、そこらへんの模索なんでしょうね。

投稿者  北村です  : 2008年10月11日 17:54

お、つよぽん、コメントありがとう。
魚と肉かぁ。そう言えば、こんなの見つけたぞ。
http://piapro.jp/content/edaq9chvxtxtc7mu

確かに商品・値段・器での差別化は難しい。現場の人が極めて重要。「直営店vsフランチャイズ店」で、実はフランチャイズの方が良いのではと言われるのは、まさしく「人」なのだと思う。
あともう一つ僕が気になっているのが、陳腐化するスピードの速さなんだな。飽きられるスピードがどんどん速くなっているように感じる。仕組みを大幅に変えることなく、3~4年単位でガラッとイメチェンする必要があるんじゃないかな。不特定多数の差異化欲求を満たし続けないと。そういう中長期単位での可変的なシステムの設計ってある程度は可能だと思うんだな。

投稿者  KK  : 2008年10月12日 10:56




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